2009年7月に読み終えた書籍① オバマ・ショック
ビートたけしも評価していると聞いて読もうと思ったコラムニスト町山智浩氏とその町山氏が師匠として仰ぐ越智道雄氏のアメリカについての対談。
オバマ・ショックとありますが、まずはアメリカの歴史について、地域の特色についての流れを語り合うところから始まります。アメリカの保守とリベラルの綱引きのおおまかな流れをざっと理解することができると思います。
町山氏はアメリカ在住で、アメリカで住宅を買ったという経緯もあり、今回の住宅バブルについてもその実体験から語られるので、日本での報道以上に問題点というかむちゃに拡大していったことが分かります。
とにかく町山氏のブッシュJr評価はかなり低く、ブッシュJrの8年間がアメリカをむちゃくちゃにした。そのむちゃくちゃにしたことを自らの生活実感と合わせながら語ります。
そのむちゃくちゃにしたのを、オバマが大統領となりいかに変えるのかということになるのですが、そのオバマ大統領がどんな人物なのかということが後半部分で展開されます。
印象に残ったのが、オバマ大統領は黒人初の大統領という報道ですが、越智氏と町山氏の対談からは、むしろはっきりとした属性のない人ということでした。アメリカで黒人というと、先祖が奴隷だったのではという(アレックス・ヘイリーの「ルーツ」などが参考になります)ことになりますが、オバマにはその奴隷の過去がありません。アメリカ本土で生活するのは19歳からで、それまではインドネシアとハワイに在住する。
また、生みの父親はアフリカ人。二番目の父親はインドネシア人、母親は白人で、実際には母方の祖父母(白人)に育てられたということで行動様式にWASPがしみ込んでいるという本当にさまざまな要素が混ざり合っているものです。
宗教的にも、子どものころから教会に通ったということもなく、二人の父親ともイスラム教徒であったが、熱心なイスラム教徒というわけではなかったそうで、宗教的にも無宗教的な属性ということで、さまざまな意味で属性がはっきりしない。裏を返すとどんな属性にも属することができる人物であることが分かります。
ブッシュJrの8年間で引き裂かれたアメリカをまさにUnitedとして機能させるためにつかわされたうってつけの人物なんだということが分かりました。ただ、そのオバマが、これから本当に世界のためになるのか。日本にとってよき大統領なのかは疑問を呈していました。まさにこれからということになるんだと思います。
アメリカを理解するという上では、中西輝政先生の「アメリカ外交の魂」そして佐々木毅先生の「アメリカの保守とリベラル」と合わせて読むと、理解がより深まると思います。
by ebiken-chigasaki
| 2009-07-05 20:33
| 読書記録