2009年4月に読んだ本① 子どもの貧困
非常の豊富なデータにより、タイトルにある「子どもの貧困」を証明していくだけでなく、そのデータにより、日本人が抱いていた様々な思いや、メディアの報道で問題と思わされてしまっていることが確かに問題ではあるが、本当はそちらよりも大きな問題があることが証明されます。
抱いていた思いとしては、子どもの貧困といった問題について、恐らく日本では税制度や社会保障により再分配機能が働き、アメリカよりは格差が是正され、貧困率も改善されているだろうと思いますが、実際には、先進国では唯一日本だけが子どもの貧困率が悪化しているというデータが示され、政府の政策により子どもの貧困については削減されていないという現実が示され、その思いも砕かれます。
また、メディアの報道という意味では、給食費などについてその未払い問題について、ここ最近のメディアの報道では、支払うだけの余裕があるにもかかわらず支払おうとしないという形でなされるものが多いと思いますが、多くは実際に貧困ゆえに払えないということがデータで示されます。
ただ、貧困について、他のこれまで連続して読んできた書籍同様、どのレベルをもって「貧困」というのか、社会が許容できないレベルというのも、言葉ではわかるが、具体的に現実問題としてそれはどういったレベルなのかということについては、社会での合意があるわけでなく、非常に難しい問題だと痛感させられました。
この著者にあるとおり、少子化担当大臣という形で、産むこと、そして保育園の整備に焦点が合わされがちですが、少子化担当大臣というよりも、子ども担当大臣として、産む、保育園、最低でも義務教育期間(できれば、高校卒業まで)、子どもが親がどんな経済状態であろうともそれに左右されずに健やかに学び育つことができる環境を整えることを考えるべきだろうという提案には私も賛同したいと思いました。
子どもの貧困が、子どもの様々な部分において、たとえば、子どもの貧困と学歴形成の関係や健康格差、意欲の格差、非行、その後の生活水準、自らが阻害されていると感じることの強弱などに、その悪い意味で強い相関関係があることが示されています。
一方で、政府の政策を先進国と比べ、その支援する意味での教育関係支出の少なさや、他の先進国では、子どもの貧困問題ということで、貧困に正面から向き合っているが、日本では少子化対策というところに集中しすぎて、さまざまな政策が子どもの貧困の解消にそれほど役に立っていないということが、児童手当・児童扶養手当・生活保護などについて説明が行われますし、母子家庭に対して役立ち切れていない母子家庭が追い詰められていってる現状というものが、そういった政策の方向性のミスマッチなどからも説明され、非常に考えさせられる1冊でした。
by ebiken-chigasaki
| 2009-04-11 19:52
| 読書記録