夕張市の財政破綻と破綻の実態 その1 破綻について
茅ヶ崎市議”えびけん”こと海老名けんたろうです。
今日はPHP地域経営塾で、自治体の財政破綻についての話を聞いてきました。
「夕張市の財政破綻と破綻処理の実態について」の話の内容を書きたいと思います。講師は札幌市の職員の方でした。
<破綻の原因>
●炭鉱閉山後の社会環境基盤整備等の実施
S30年代~H2 炭鉱閉山対策として観光の振興・住宅・教育・福祉対策を展開するも、人口が大幅減少
人口ピーク(1960) 11.7万人 → 2005(国調:破綻前) 1.3万人
人口が約9分の1になるも、行政自身はあまりダウンサイジングできなかった。
多額の公債費(2004) 一人当たり14.5万円(類似団体 5.6万円)
●過大な観光事業への投資と構造的赤字
1996 ホテルシューパロ取得 20億円 2002 Mt。レースイ取得 26億円
人件費の割合が高く、収益性悪化
●非効率な組織運営
人口1,000人あたり職員数(2004) 夕張市20.12人 (類似団体10.2人)
同じくらいの団体の2倍、当時はこの数字上、最も肥大した非効率な団体とも
●産炭地振興対策の廃止などに伴う収入の大幅減少
税収 ピーク(1974) 21.6億円 → 2005(破綻前) 9.5億円
普通交付税 ピーク(2001) 69.9億円 → 2005(破綻前) 31.1億円
これらに加えて、不適正な財務処理によって、赤字の実態を表面化させず拡大させてきた
→出納整理期間(2か月)を利用して、会計年度をまたいでの貸付&償還
<なぜ、不適正な財務処理が起きたのか>
1.自治体ガバナンスの機能不全
・財政セクションの組織的な会計操作(一番統制すべき部門にも関わらず)
→コンプライアンスの欠如
・統制機能を持つ予算を不適正に利用
・異なる金融機関から一時借入金を連続的に借り換え(これは、夕張の破綻で有名になった手法)
→いわゆる多重債務者の自転車操業と同じ、A金融機関からの借金を返すために、B機関から借りて、続いてB金融機関からの借金を返すために、C金融機関から借りる・・・を繰り返す。
・議会の監視と市民統制が不十分
いわゆるall与党体制
これらに加えて、その前提として、(1)財務情報の提供不十分、(2)肥大化&硬直化した組織
当時の中田市長がカリスマ市長で、その市長にお任せ状態になってしまっていた。
2.旧再建法の限界
・実質赤字比率のみを基準 →実質公債費比率などの悪化は対象外
・再建団代移行は申請主義
3.決算に対する監査機能が不十分
・一般会計、特別会計、第3セクターにわたる会計操作が行われ、チェックできなかった。
・財務指標の正確性等を担保する手段が不十分
・決算報告に関する監査が機能していたら防げた可能性
→しかし、その監査委員が元財政部長という長年かかわってきた側…
中田市長(当時)も、財政が厳しいことについては発言をしていたが追及がなかった。
しかし、財政破綻の兆候はあった。
標準財政規模と歳出の関係
標準財政規模×2.0>歳出 ならいいが、夕張は、1996年から「×2.6」になり、2004年には、「×4.3」になっていた。
歳入のうち、諸収入が占める割合が、どんどん高くなり、2004年には5割をしめていた。
などがあったが、結局
(1)不十分な財務情報の公開
(2)監査も、もともと関わってきた側のものであったために機能せず
(3)議会もAll与党状態でチェックできず
→当時のカリスマ市長に白紙委任的に任せてしまっていた。
<私の感想>
この話を聞きながらあらためて地方議会の市長与党という存在の危うさを感じました。私は地方政治は、行政(市長)と議会の二元代表の原則に立ち返るならば、議会は本質的には市長野党的であるべきなんだと思います。ただ、それはなんでも反対するという意味ではなく、市長与党で市長を支えなければいけないなんていう考え方ではなく、是是非非で挑むという姿勢こそが重要で、All与党なんて表現された時点で、議会は不要だ言われているに等しいんだと私は思います。
次は、破綻後の実態についてを書きます。
出典資料:「夕張市の財政破綻と破綻処理の実態について」吉田博氏
茅ヶ崎市議会議員 海老名けんたろう
今日はPHP地域経営塾で、自治体の財政破綻についての話を聞いてきました。
「夕張市の財政破綻と破綻処理の実態について」の話の内容を書きたいと思います。講師は札幌市の職員の方でした。
<破綻の原因>
●炭鉱閉山後の社会環境基盤整備等の実施
S30年代~H2 炭鉱閉山対策として観光の振興・住宅・教育・福祉対策を展開するも、人口が大幅減少
人口ピーク(1960) 11.7万人 → 2005(国調:破綻前) 1.3万人
人口が約9分の1になるも、行政自身はあまりダウンサイジングできなかった。
多額の公債費(2004) 一人当たり14.5万円(類似団体 5.6万円)
●過大な観光事業への投資と構造的赤字
1996 ホテルシューパロ取得 20億円 2002 Mt。レースイ取得 26億円
人件費の割合が高く、収益性悪化
●非効率な組織運営
人口1,000人あたり職員数(2004) 夕張市20.12人 (類似団体10.2人)
同じくらいの団体の2倍、当時はこの数字上、最も肥大した非効率な団体とも
●産炭地振興対策の廃止などに伴う収入の大幅減少
税収 ピーク(1974) 21.6億円 → 2005(破綻前) 9.5億円
普通交付税 ピーク(2001) 69.9億円 → 2005(破綻前) 31.1億円
これらに加えて、不適正な財務処理によって、赤字の実態を表面化させず拡大させてきた
→出納整理期間(2か月)を利用して、会計年度をまたいでの貸付&償還
<なぜ、不適正な財務処理が起きたのか>
1.自治体ガバナンスの機能不全
・財政セクションの組織的な会計操作(一番統制すべき部門にも関わらず)
→コンプライアンスの欠如
・統制機能を持つ予算を不適正に利用
・異なる金融機関から一時借入金を連続的に借り換え(これは、夕張の破綻で有名になった手法)
→いわゆる多重債務者の自転車操業と同じ、A金融機関からの借金を返すために、B機関から借りて、続いてB金融機関からの借金を返すために、C金融機関から借りる・・・を繰り返す。
・議会の監視と市民統制が不十分
いわゆるall与党体制
これらに加えて、その前提として、(1)財務情報の提供不十分、(2)肥大化&硬直化した組織
当時の中田市長がカリスマ市長で、その市長にお任せ状態になってしまっていた。
2.旧再建法の限界
・実質赤字比率のみを基準 →実質公債費比率などの悪化は対象外
・再建団代移行は申請主義
3.決算に対する監査機能が不十分
・一般会計、特別会計、第3セクターにわたる会計操作が行われ、チェックできなかった。
・財務指標の正確性等を担保する手段が不十分
・決算報告に関する監査が機能していたら防げた可能性
→しかし、その監査委員が元財政部長という長年かかわってきた側…
中田市長(当時)も、財政が厳しいことについては発言をしていたが追及がなかった。
しかし、財政破綻の兆候はあった。
標準財政規模と歳出の関係
標準財政規模×2.0>歳出 ならいいが、夕張は、1996年から「×2.6」になり、2004年には、「×4.3」になっていた。
歳入のうち、諸収入が占める割合が、どんどん高くなり、2004年には5割をしめていた。
などがあったが、結局
(1)不十分な財務情報の公開
(2)監査も、もともと関わってきた側のものであったために機能せず
(3)議会もAll与党状態でチェックできず
→当時のカリスマ市長に白紙委任的に任せてしまっていた。
<私の感想>
この話を聞きながらあらためて地方議会の市長与党という存在の危うさを感じました。私は地方政治は、行政(市長)と議会の二元代表の原則に立ち返るならば、議会は本質的には市長野党的であるべきなんだと思います。ただ、それはなんでも反対するという意味ではなく、市長与党で市長を支えなければいけないなんていう考え方ではなく、是是非非で挑むという姿勢こそが重要で、All与党なんて表現された時点で、議会は不要だ言われているに等しいんだと私は思います。
次は、破綻後の実態についてを書きます。
出典資料:「夕張市の財政破綻と破綻処理の実態について」吉田博氏
茅ヶ崎市議会議員 海老名けんたろう
by ebiken-chigasaki
| 2012-01-24 23:59
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