茅ヶ崎市議”えびけんの政治”日記 by 茅ヶ崎市議会議員 海老名けんたろう

茅ヶ崎市議会議員”えびけん”こと、海老名けんたろう(松下政経塾出身)の茅ヶ崎市議活動日記。メールはebiken72@gmail.comまで
カテゴリ:読書記録( 62 )
テロリズムの罠 右巻 著:佐藤優

テロリズムの罠 右巻 忍び寄るファシズムの魅力 (角川oneテーマ21)

佐藤 優 / 角川学芸出版

 ロシアと中国の今後についての著者の予測と、日本が、そして世界がファシズムになってしまうのではないかという警鐘を鳴らす1冊。

 著者としては、ファシズムは欧米の良質な知的伝統を継承した運動と、それ自体は評価している部分もあるが、しかし、ファシズムは、その内側と外側を線引きし、その結果として排外主義に、最終的には戦争につながることから、ファシズム化してはならないと説きます(ちなみに、ヒトラーのナチズムとは区別し、ムッソリーニのファシズムのことを指しています。日本人はヒットラーもムッソリーニも同じ考えのように思いがちですが、佐藤氏は別物と考えることを説いています)。また、アメリカのバラク・オバマ氏についても、深刻な経済危機の中、大統領に当選し、社会の対立を、民主党と共和党の壁を越えるなどで国家としてまとめ、国歌主義的に乗り越えようとする姿にムッソリーニのファシズムに掛け合わせ、その懸念を表明しています。確かに、経済についてこの不況の中、保護主義政策が見られるようになり、場合によってはブロック経済に発展するのではないかと私も危惧をていますが、一面ありうる指摘だと思い読みました。

 日本においては、新自由主義政策の行き過ぎにより、派遣切り、派遣テント村で「見える化」された格差の行き過ぎた状態について、この絶対的貧困について、雨宮処凛との対談や、河上肇「貧乏物語」から、対応しなければ、新自由主義と資本主義の組み合わせにより国民がどんどん分断されてしまうことを説く中で、今では、このような主張は、左翼・革新の主張のようではあるが、戦前は右翼・保守が、拡大する格差、その貧困に対して立ち向かうために行動していたことを、この書籍を通して、改めて気が付き、そうだったと思うとともに、この絶対的貧困については、右も左も関係なく取り組むべき課題であることを認識させられました。

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by ebiken-chigasaki | 2009-05-31 23:30 | 読書記録
テロリズムの罠 左巻 著:佐藤優

テロリズムの罠 左巻 新自由主義社会の行方 (角川oneテーマ21)

佐藤 優 / 角川学芸出版

 とにかく著者の佐藤優氏は本当に博覧強記で、そういった補助線を使って、現在の日本・そして世界を読み解くんだと驚きます。

 権藤成卿は、ここのところの佐藤優氏の著作を読むようになり、その一連の著書の中でよく登場される方ですが、今回新たに私が知ったのは、葉山嘉樹です。

 最近ブームとなった「蟹工船」に対して異論を唱え、エリート銀行員であった小林多喜二が、その正義感から共産党に接近し、日本共産党こそが日本を救う。そのモデルがソ連であることを宣伝するために書いた仮想小説であるということが、リアリズムとは異なる所を描き出していくことで証明するのは、驚きでした。小林多喜二=プロレタリアートと思っていたので、そもそもがエリート銀行員というのは知りませんでした。

 そこで、佐藤優氏は、プロレタリア作家でマルクス主義者の葉山嘉樹の「海に生くる人々」を資本主義を認識する上での作品として、「蟹工船」と比較しながら語ります。
 
 また。秋葉原無差別殺傷事件、死刑囚の陸田氏が死刑執行前に哲学者の故・池田晶子氏とのやりとりの書簡から、資本主義の進展により、お金により人間が支配されていくマルクスの「物神性」の説明がなされるなど、資本主義と新自由主義のタッグにより、貨幣と資本に人が、社会が支配され、それによりバラバラになり、国家が弱くなってしまい、それを保つために国家権力の暴力性が増してしまうこの流れを止める処方箋として、佐藤優氏は、権藤成卿の農本主義を掲げ、権藤成卿の「君民共治論」の社稷国家、地域共同体を復活させることを説かれ、この部分において、地方分権が上からではなく、新の意味での地方自治の確立が、地域共同体の復活にも関連するのではないかと、私自身の立場においては考えてしまいます。

 その他、安倍内閣の崩壊の見立てや、北方領土や竹島の領土問題などについての言及もあり、2007年から2008年の2年間を佐藤優氏流に総括した1冊ともいえるものです。

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by ebiken-chigasaki | 2009-05-30 00:20 | 読書記録
アメリカ外交の魂 著:中西輝政

アメリカ外交の魂―帝国の理念と本能

中西 輝政 / 集英社

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 アメリカについて考えてみようということで読んだ1冊です。

 帝国について豊富な歴史の知識と卓抜した洞察力でその特性を明らかにする中西輝政先生の、イギリス、そして中国に続く、アメリカについて、その外交政策をたどりながら、その外交政策に与えた国内の影響や国際情勢をもとに、その特徴を描きだします。

 中西輝政先生によると、アメリカには4つの顔があるとのことです。

 第一は、「バージニアのアメリカ」:オールドイングランドのアメリカで、ジェントルマン・イギリス国教会の主流派に属し、すぐれて体制的で、ヨーロッパ的・イギリス的な自由の観念がよく反映しているアメリカ

 第二は、「ピューリタンのアメリカ」:マサチューセッツを中心としたニューイングランドのアメリカで、古いイギリスと決別し、アメリカにやってきたまさにピューリタンで、どこかに宗教的な使命感を持った理想主義雰囲気を漂わせているアメリカ
 
 このマサチューセッツのアメリカとバージニアのアメリカ、ジェントルマンとピューリタンが二項対立になっている。

 第三は、「ミッドアトランティックのアメリカ」:ニューヨークやペンシルバニアのコスモポリタンで物質主義的なアメリカで、ペンシルバニアの「信教の自由」を重んじ、人種的・宗教的な多様性を受け入れる「寛容さ」で、代表的な宗派はクエーカー教徒、そして、マネーゲームの伝統のニューヨークの「富」「進歩主義」のアメリカで、この「富」「進歩主義」「寛容さ」という明るく、だれとでも仲良く人種のるつぼのアメリカ、日本人がイメージしやすいアメリカ
 
 明治の文明開化において、キリスト教徒となった開明的知識人影響を与えたのがこの第三の顔で、新渡戸稲造、津田梅子、内村鑑三など、クエーカー教の影響が非常に強い。

 第四は、「ディープサウスのアメリカ」:サウスカロナイナやジョージアで、この地域では当初より奴隷が多く、植民地初期から奴隷の反乱に悩まされ、また、先住民のインディアンや、ヒスパニック系の少数民族との戦いなどで、とにかく自分のことは自分で守る。独立独歩のアメリカ

 とこの4つのアメリカがどのように形成されてきたのかを、アメリカの外交、アメリカへの移住、独立戦争から建国、南北戦争、米西戦争、モンロー主義、第一次世界大戦と国際連盟に第二次世界大戦と国際連合、そしてベトナム戦争に、今のイラクとのかかわりなど、世界にかかわりすぎるアメリカと、かかわろうとしなさすぎるアメリカの両面を、このアメリカの顔とそれを形成した歴史や国内事情で説明がなされます。

 人工国家、移民の人たちが、それぞれの背景を抱えながら、それぞれが州をつくり、それが連邦制をとり、一つのアメリカとして共和制をとるユニークなアメリカを形作りその底流を知ることができます。
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by ebiken-chigasaki | 2009-05-29 22:54 | 読書記録
宗教から読むアメリカ 著:森孝一

宗教からよむ「アメリカ」 (講談社選書メチエ)

森 孝一 / 講談社



 日本にいて政教分離という言葉の理解を持って、アメリカを見ると不思議に思うことがあります。大統領就任式のとき、祈りに始まり、祈りに終わります。そして、大統領は聖書を手元に宣誓します。オバマ大統領もそうでした。日本人ならば「政教分離」なはずなのに、なぜ?と思うのではないでしょうか?

 そんな疑問の中、ニューエコノミーを生みだしたアメリカ、ヨーロッパともなじめないアメリカの独自性というか特殊性について考えてみたいと思い、その「宗教性」にスポットを当てて読んでみた1冊です。
 
 「アメリカの見えざる国教」がどのように形成されたのか?

 宗教学者ロバート・N・ベラは、アメリカには市民宗教があり、それは、多民族国家であるアメリカに統合を与え、政治に宗教的次元を与えるものであり。それこそが見えざる国教であるが、アメリカの場合は、プロテスタント、カトリック、ユダヤ教にも受け入れられる一定の枠組みを持ったものであることがわかります。

 また、アメリカ大統領が、単に政治的なリーダーだけではなく、国家の統合の象徴としての意味で宗教的な役割も与えられた存在で、大統領を頂点にした市民宗教という存在です。

 南北戦争について、私たちは奴隷解放と経済政策の違いのレベルでしか学んでいませんが、リンカーンの有名な演説、ゲディスバーグ演説の「人民の、人民による、人民のための政治」の直前には、「この国家をして、神のもとに、新しく自由の誕生をなさしめるために」という言葉が付いており、非常に宗教的表現がつけられていることは、やはりアメリカの見えざる国教の存在を痛感させられるものでした。

 その他、モルモン教、アーミッシュ、人民寺院、ブランチ・デビディアン、そして最近のアメリカ大統領選で大きな影響を及ぼす宗教右派のファンダメンタリストの中身とその政治的影響力を及ぼしていく過程やとった戦略戦術がわかり、ユニークさを形作るアメリカの宗教の一端を垣間見ることができます。

 後半では、多民族国家アメリカの統合が崩れていることを著者の実体験から展開されます。白人と黒人間の静かな分離・対立、同教派内での保守とリベラルの対話がないこと、同教派であっても人種が違えば、礼拝する教会が異なり、一緒には礼拝しない現実など、「アメリカの見えざる国教」が、ゆらぎ、ナショナルアイデンティティを求めていることが書かれています。そういった意味では今回のオバマ大統領は、その人種を超える象徴として期待されているということなんでしょう。2004年の民主党大会の基調講演でオバマ氏も

「there is the United States of America. There is not a Black America and a White America and Latino America and Asian America -- there’s the United States of America.」

と演説したように、その一つのアメリカを実現する「アメリカの見えざる国教」の新たな内容=ナショナルアイデンティティが求められているんだろうと思います。
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by ebiken-chigasaki | 2009-05-22 10:55 | 読書記録
2009年5月に読み終えた本② 勝者の代償

勝者の代償―ニューエコノミーの深淵と未来

ロバート・B. ライシュ / 東洋経済新報社

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 貧困関係の書籍を読むうちにぶち当たったキーワードが「ニューエコノミー」でした。その「ニューエコノミー」を知る1冊としてお薦めに挙げられていたのが、この「勝者の代償」でした(ちなみに、もう一冊はドラッカーの「ネクストソサイエティ」)。

 著者は、カーター政権期にもスタッフとして働き、クリントン政権においては労働長官を務め、政策立案に関わっていた方です。

 ニューエコノミーがもたらした正の部分と負の部分についての話が展開されます。

 正の部分については、「すばらしき取引」の時代として、多くの人たちが消費者の立場として、無限の選択が、容易にできるようになったこと、また、これまでの大量生産の規格品から、個別に自分に合うものを居ながらにして選ぶことができるようになった。今までは自分の住んでいるか行けるまでの範囲だった市場が、世界中に無数の選択肢が存在する市場となった。

 また、消費者に対して、選ばれるだけのものを提供できるor生み出せる人には、本当に多くの富が得られるようになった。

 ということであったが、一方で、負の部分として、この「ニューエコノミー」は。シュンペーターが唱えたイノベーションを常にしつづけ、走り続けるしかない社会であった。新たな技術革新をしても、その有利性はすぐに失われてしまうため、いつまでも有利性を保ち、富を得続けるには、とにかくイノベーションの連続であるということで、イノベーションできる(もたらす)人に対しては、莫大な富をもたらすことになるが、イノベーションをもたらすようなクリエイティブさがない(低い)人たちにとっては、逆に、価値が見出されないがゆえに、誰でもいいということになり、こちらはどんどんと得られる報酬が下がるということで、今の日本でも起こっていますが、一億総中流化イメージの崩壊、そしてスーパーリッチの出現(ヒルズ族など)から、派遣切りやホームレスの存在といった超格差社会でした。

 とにかく莫大な富を得ることのできる人たちも、常にイノベーションを求められるために、必死に働き続けなければならない状況であることや、逆に低賃金にあえいでる人たちも、収入確保のために働き続けなければならず、そのために、労働以外のさまざまな部分(家庭・地域・友人など)の部分が犠牲になってしまっていることが、さまざまなデータを駆使する形で論証されています。

 筆者としては、だからといって「ニューエコノミー」を完全に否定するのではなく、「ニューエコノミー」と家庭・地域・友人とのかかわりなどとのバランスが大事だということで、最後は、このバランスをどう取るのかについて、著者の提案がなされており、確かにそのバランスをいかに取るかを考えるべきだと思うとともに、日本もこのまま「ニューエコノミー」を展開し続けていくと、果しなく続く競争社会と、その過程で生み出される莫大な富を得るごく一部の勝者と圧倒的な敗者、分断される社会が待ち受けるのではないかと思ってしまう1冊でした。
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by ebiken-chigasaki | 2009-05-20 00:46 | 読書記録
2009年5月に読み終えた本① 多読術

多読術 (ちくまプリマー新書)

松岡正剛 / 筑摩書房

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 松岡正剛氏が、「本を読むこと」について述べた1冊。多読術というタイトルから、昨今はやりの速読法を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、そうではなく、松岡正剛氏が、どのように本を読んできたのか、また読んでいるのか、また読書という行為を松岡正剛氏独自の観点から分析します。

 読前術
 読中術
 読後術
といった読み方のスタイルや、読むこと、著者の書いたものを読者が読むことを通して、いかに編集するのか、その編集の際に松岡氏が取り組んでいる方法を読むと、これが松岡氏のその知識量のすごさと、その整理の仕方の独特さを垣間見ることができます。

 とにかくてっとり早く情報を得るということで、「速読」花盛りですが、そうでなはい読み方を追求したい方には、この「多読術」がおススメですが、この本を読めば、タイトルの通り、多読術が身につくわけではありません。タイトルと中身が違うんだよな~という思いはいなめませんが、読書を読書法ということにとらわれずに、もっと自由な発想で考える。また、書き手と読み手の関係についても、松岡正剛氏の編集工学的発想で考えてみるというところなんだろうと思いますが、それはそれで、いろいろとインスピーレーションを得ることができるものでした。

 そっかー松岡正剛氏の世界は、こうやって形作られていっているんだなーというのもわかり、ファンにとって松岡正剛氏の頭の中の構造がわかる感じがする点でも楽しい1冊です。
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by ebiken-chigasaki | 2009-05-05 12:54 | 読書記録
2009年4月に読み終えた書籍<まとめ>
 2009年4月に読み終えた書籍です。今月は4冊でした。

①子どもの貧困-日本の貧困を考える(岩波新書) 著:阿部彩
  読書記録のページは、こちら

②なぜ世界は不況に陥ったのか 集中講義・金融危機と経済学(日経BP) 著:池尾和人
  読書記録のページは、こちら

③新平等社会-「希望格差」を超えて(文春文庫) 著:山田昌弘
  読書記録のページは、こちら

④ベーシック・インカム入門(光文社新書) 著:山森亮
  読書記録のページは、こちら
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by ebiken-chigasaki | 2009-05-02 10:24 | 読書記録
2009年4月に読み終えた本④ ベーシックインカム入門

ベーシック・インカム入門 (光文社新書)

山森亮 / 光文社

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 1年以上前に、この「ベーシックインカム」という言葉を本屋で見かけて、そのときはスルーしてしまいましたが、リーマンショック以降、貧困問題に関心があり、学ぼうと思い、一連の書籍を読む中で、新たな考え方として再度出会いました。

 「働かざる者、食うべからず」という言葉が、広く流布しており、日本の古来の勤労観からすると、かなり考え方が違うので、戸惑いも覚える部分もありますが、ある意味、日本の公地公民制度などもよくよく考えていくと、このベーシックインカム的なものだとも思えます。

 また、この考え方自体は、最近日本ではちらほらと見かけるようになりましたが、その歴史は古く、欧米で見れば200年以上もの時間の経過があること、また、ノーベル経済学賞を受賞したエコノミストも、呼称はどうあれ、ベーシックインカムを提唱していたり、認めているということは、この書籍を読むまで知りませんでした。

 生活保護については、日本では捕捉率が20%程度(必要だと思われる人の20%程度にしか支給されていないということ)であることや、申請主義であることの受けることのスティグマ(恥辱感)を与えること、支給に関しての事務手続きや、支給後の不正受給のような問題などを確認する事務などの制度自体についても経費がかかっていることなどからも、ベーシックインカムの方がいいのではないかと思わされる面もありました。

 ただ、これを本格的に採用するという場合には、現在の福祉国家の制度設計に関する前提となる考え方の変更や、労働観の変更など、パラダイムチェンジをしなければいけないので、実際にはかなりの抵抗があるのではないかとも思います。しかし、考え方としては興味深く、ベーシックインカムについて広く・浅く知るという意味では、その入門編としてはいい1冊ではないかと思いますし、私自身、もっとこのベーシックインカムという考え方についての理解を深めたいと思いました。
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by ebiken-chigasaki | 2009-04-29 22:27 | 読書記録
2009年4月に読み終えた本③ 新平等社会

新平等社会―「希望格差」を超えて (文春文庫)

山田 昌弘 / 文藝春秋

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 キーワードは「希望格差」

 格差について、格差がなぜ悪いのかという議論があります。私の周りでもそういった意見を聞きます。イギリスの政策学者ミリバンドが指摘している「格差を生みだす自由な経済市場を肯定すること」と「市場の自由の結果生じた格差を肯定すること」は別次元だということは、「格差」とひとくくりにして考えるがゆえに議論が混乱してしまうのだと思います。人間が自由に行動した結果、生じた格差が社会として許容できるものでないなら、社会が是正しなければならない。その格差が社会において許容できるかできないかを考えなければならないと整理できます。

 格差拡大について、「ニューエコノミー」の進展により、日本だけでなく世界で、先進国でその拡大が進んでいることが、さまざまなデータで示され、世界を知ることができます。

 私が幼き頃から社会人になるくらいまでの間、「勉強して、いい大学に入れば、いい会社に入ることができて、豊かな生活をおくることができる」ということをよく耳にしましたし、親にも言われました。ただ、今やこのイメージも大きく崩れ、努力しても報われるのかわからない状況が発生し、報われないと思う人たちは、希望を失う。という形で、希望を持てる人と持てない人に分かれてしまう格差が生じることの説明がなされます。

 「ニューエコノミー」が進展する中、世界中で、人々の欲求をうまくとらえ、形にすることのできる少量の専門中核労働者と、決まった作業をこなす大量の定型作業労働者に分かれ、少量の前者は、さまざまなスキル開発も進み。、どんどんと収入が増え、大量の後者は、定型作業のために、スキル開発も進まず、収入は低いまま、また、仕事もさほどスキルを要するものではないため、いつでも替えが利くため、失職の恐れもあり、失職してしまうとスキル開発がなされていないため、好条件の仕事に就けるわけもなく、どんどん上に上がる人と、下に底抜けになる人に分かれてしまっていく現状が描き出されています。

 この本で何度か登場する社会心理学者のランドルフ・ネッセの言葉、「希望とは努力が報われると思う時に生じる。絶望は努力してもしなくても同じだと思う時に生じる」という言葉は、まさにその通りであり、今、政治で、努力しても報われる可能性のある社会に変えることが求められていることを実感します。

 家族格差・教育格差・仕事格差・結婚格差さまざまな格差の分析が行われるとともに、日本では、「パラサイトシングル」といった言葉が一時期メディアなどをにぎわしたときは、最大の社会保障は「家族」だと揶揄された現状が崩れ、そういった家族主義的ではない方向での政策の必要性が説かれ、非常に学ぶところの多い1冊でした。
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by ebiken-chigasaki | 2009-04-28 12:55 | 読書記録
2009年4月に読み終えた本② なぜ世界は不況に陥ったのか

なぜ世界は不況に陥ったのか 集中講義・金融危機と経済学

池尾 和人 / 日経BP社

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 アメリカ発の世界同時不況について、どうしてアメリカから世界に広がったのか?その理由について、短期的な見方だけでなく、30年スパンでのアメリカの産業構造の転換や、金融工学による複雑化、投資銀行の性質の変化についての解説が、池尾・池田両氏の対談により行われます。

 日本では、最近「ケインズ」に関連する書籍を目にするようになりましたし、「ケインズ」の名前を聞くようになりましたが、この書籍においては、相変わらずケインズと報じるメディアや、引き合いに出す政治家に対して、世界においては、もはや「ケインズ」か「ケインズではない」のかではなく、もっともっと新しい経済学が興っていて、それを理解していないことへの痛烈な批判とともに、その新しい経済学についての流れも解説されています。

 また今回のアメリカでの金融破たんと日本の破綻は、性質がかなり違うから、必ずしも日本がお手本になるというわけではないこと、その違いとして、日本は銀行が直接の貸しているために、貸し手と借り手の距離が近かったが、アメリカの場合は、金融システムが、証券化とその証券を組み合わせていくという形で超複雑化し、キャッシュフローを提供する人とそれを受け取る投資家の間があまりにも開きすぎていて、トレースできずに追いかけることができない状況であるということで、必ずしもいい手本になるわけではなく、ただ、ぐずぐずと先送り的な対応をしていると、「失われた10年」などのように長期化してしまうという反面教師であるという話が展開されます。

 金融商品事態については、私自身専門ではないので、その詳細についてはわかりづらかった部分もありましたが、90年代のバブル崩壊の日本とは異なるということは十分にわかりました。

 また、日本については、確かにこの金融破たんにより不況になったことについて、そのアメリカの金融破たんの影響というよりも、長年、長期的な展望に立ち、産業構造の転換を図ってこなかったこと、日本の労働生産性が、OECD調べで、2007年、G7諸国中最低であり、その中でもサービス産業の生産性があまりに低いことについて、産業構造を転換させる構造改革の必要性など、日本の問題は今回のアメリカ発の金融危機の問題とは異なり、いまだ古い体制であるという指摘については、確かにそのとおりだと思う反面、産業構造の転換、働いている労働者をどのように転換させるのかは政治の課題であるが、同時に難しさも実感しました。

 現在の世界で語られている新しい経済学の動向や、今回のアメリカ発の金融危機による同時不況について、そのアメリカの金融危機について理解を深めたい方には、読んでいただきたい1冊です。
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by ebiken-chigasaki | 2009-04-23 15:29 | 読書記録


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